橋本崇載(2016)『棋士の一分 将棋界が変わるには』KADOKAWA

橋本崇載(2016)『棋士の一分 将棋界が変わるには』KADOKAWAを読んだ。偏向的な表現が認められ、教養に乏しい印象を受けた。

例えば,「はじめに」では,

将棋連盟はこの日,「三浦弘行九段を十二月三十一日までの出場停止処分にしたこと」,そして「三浦九段が挑戦者になることが決まっていた第二十九期竜王戦七番勝負の挑戦者を丸山忠久九段に変更したこと」を発表した。

とあるが,日本将棋連盟の「第29期竜王戦七番勝負挑戦者の変更について」をみると,

10月15,16日に京都市の「天龍寺」で開幕する第29期竜王戦七番勝負について,挑戦者の三浦弘行九段が出場しないことになりましたので,お知らせいたします。

対局規定により,挑戦者決定戦に出場した丸山忠久九段が繰り上がりで渡辺明竜王と対局することになります。

当連盟は12日,三浦九段を2016年12月31日まで出場停止の処分といたしました。

今回の挑戦者の変更については,主催の読売新聞社からもご了承を得ております。

谷川浩司会長のコメント】

七番勝負直前の変更となり,関係者や将棋ファンの皆様にご迷惑をお掛けし申し訳ありません。対局者のお二人には名棋譜を作り上げることを期待しています。

丸山忠久九段のコメント】
日本将棋連盟の決定には個人的には賛成しかねますが,竜王戦は将棋の最高棋戦ですので全力を尽くします。

となっている。これを読む限り,物事の順番は,三浦弘行九段が竜王戦七番勝負に出場しない,対局規定により丸山忠久九段が対局する,日本将棋連盟三浦弘行九段を出場停止の処分とした,である。日本将棋連盟は,挑戦者の変更について能動的に行動したのではなく,対局規定にしたがっただけである。

また,橋本崇載八段が理事選に出たときに作成した所信表明のような文書があって美辞麗句が並んでいたが,大局観も目先の利益も感じられなかった。

1.「将棋ファンがお金を使いたくなる」将棋界へ
近年,インターネットの普及により,昔では考えられないほど手軽に将棋を楽しめるようになりました。競技人口は確実に増えていると思います。

しかし,その反面,「お金を落としてくれる」層が減ってしまっているという現実からも我々は目をそむけてはいけません。人間同士の手に汗握る戦いをお金を払ってでも見たい,という人を増やしていかなくては棋戦の衰退をくい止めることはできません。

先日の棋士会では,将棋界を応援してくださる方の出資により,消滅寸前だったある棋戦がなんとか存続できることになったとの報告がありました。しかし,大手新聞社との次回の契約更新では,契約金大幅減額は避けられないであろう,との報告も。
いずれにしても,今崖っぷちにたたされていることは間違いありません。スポンサーがつかないのであれば,皆で探しに行こうではありませんか!私は、競馬の有馬記念のような,「ファン投票で出場者が決まる」新棋戦を創設したいと考えています。また,是非とも皆様のアイデアを実現できるよう積極的に活動していきたいと思います。

2.「適材適所」やりがいのある仕事に

公益財団法人に改革後,おそらくほとんどの方が現在の収入や待遇に不満を感じているのではないでしょうか?おそらく,現職の役員の方が最も頭を悩ませている部分かと思います。全会員に十分に仕事が行き渡っていない状態、納得のいく収入の得られていない状態は早急に解決せねばと考えております。

一口に普及の仕事といってもいろんな役割があります。適材適所という言葉がありますが,指導が上手い方,解説が上手い方,イベント向きな方,ネットの知識のある方,これらは将棋普及にどれも欠かすことのできない大事な役割であります。

不公平の無きよう,可能な限り適材適所で仕事をしていただく。やりがいのある普及活動が,正会員の皆様の収入保証となるシステムを早く確立すべきと考えております。

また,レッスンプロ棋士の保証制度や地方在住棋士への支援制度なども,ゆくゆくは設けてまいりたいと考えております。とにかく早く,正会員の皆様の納得を得られるように。積極的な理事会が先頭に立ち,全会員で力を合わせて,明るい未来へ。