友利昴(2018)『オリンピックVS便乗商法:まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』作品社

友利昴(2018)『オリンピックVS便乗商法:まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』作品社を読んだ。

本書を執筆するきっかけとなったのは,2020年東京オリンピック大会の開催が決まった翌年,ある業界団体が主催したアンブッシュ・マーケティング(便乗商法)に関する勉強会に参加したことである。オリンピックやFIFAワールドカップの主要なスポンサー企業の担当者が複数登壇し,大会主催者によるアンブッシュ・マーケティングに対する取り締まりや規制方針に間近で接した経験を語り,その法的な性質を議論するという内容だった。

そこで紹介されたのは,法律で認められた範囲や,一般的な社会常識をやすやすと超えて,市井の人々がオリンピックやワールドカップの盛り上がりに乗じて行おうとする宣伝行為をあの手この手で規制しようとするIOCFIFAの姿だった。IOCによる「法を超えた権利行使」の実例は,本書においても存分に取り上げた通りだが,それはまさにカルチャーショックであった。

当時,筆者は企業で自社の知的財産やブランドを管理する業務に従事していた。そのような立場で参加した勉強会だったので,「法的根拠もないのにこんなに堂々と権利主張をしてもいいのか」とショックを受けると同時に,「ブランドを保護するためにはここまでやらないといけないのか」と素直に感銘を受けたことを覚えている。法律を拡大解釈することも厭わない,「どんな手段を使ってでもブランドを守る」という強い決意と行動力に,憧憬すら抱いたものである。

(後略)