森平爽一郎(2011)『物語(エピソード)で読み解くファイナンス入門』日本経済新聞出版

森平爽一郎(2011)『物語(エピソード)で読み解くファイナンス入門』日本経済新聞出版を読んだ。

ほかにも日本の宝くじはアメリカと比べてよい点があります。宝くじの法律「当せん金付証票法」の第13条によって,「当せん金付証票の金品については所得税を課さない」と謳っています。なんと太っ腹でしょうか。これを利用しない手はありません。宝くじは合法的な節税対策になるのです。しかし,宝くじに当たるのは確率現象だから,この方策は確実な節税対策になりません。税務当局と脱税者のあいだのやりとりを描いた映画「マルサの女」では,脱税目的で宝くじ券の売買が行われているシーンがあります。

日本における金の需要は税金対策です。ひとつは脱税,もうひとつは合法的な節税対策です。脱税事件でおなじみの光景になっていますが,金の延べ棒が隠されていることも多いです。

金は地面に埋めておいても屋根裏や床下のような湿気が高くて高温のところにおいても,小さくて目立たないし変質しません。したがって,出所不明瞭なお金を隠すにはもってこいの手段です。

もうひとつは日本の税法上の問題-仏具には相続税がかからない-ということがあります。相続税のかからないものは7つありますが,そのうちのひとつが仏具です。ただし仏具といっても「墓地や墓石,仏壇,仏具,神を祀る道具など日常礼拝をしているもの」であり,骨董的な価値のある仏像などはダメです(相続税法第12条第1項第2号,ならびに同法基本通達第12条関係12-2)。

そういうことになると,毎日おがんでいる金無垢の仏像とか金でつくった仏具が相続税対策上,もっともよい投資でしょう。なかでも注目されているのが「御鈴」です。あの小さな座布団の上に鎮座する,たたくと「リーーン」とよい音のする仏具です。金でできていれば,鉄よりもよい音がして,残存時間が長い。ありがたみも大きそうですね。金はこのように,リスクヘッジ手段であるとともに節税対策としても意味のある資産投資だといえます。