長橋賢吾(2016)『図解入門ビジネス FinTechの基本と仕組みがよ~くわかる本』秀和システム

長橋賢吾(2016)『図解入門ビジネス FinTechの基本と仕組みがよ~くわかる本』秀和システムを読んだ。

本書は,FinTechの事例集である。章ごとに参考文献が列挙されていたり,本書の最後に索引があったり,著者の親切心を感じた。

第1章第1節まで精読した後,本書全体を約5分間眺めたところ,次の2点が気になった。現時点では,これ以上読む気はない。

1点目は,タイトルと内容の不一致である。まず,事例の図解が,ほとんどなかった。そもそも,「図解入門ビジネス」は,ビジネスの図解入門なのか,入門ビジネスの図解なのか又はこれら以外なのか,意味が分からなかった。次に,「FinTech」の定義が分からなかった。著者は,「フィンテック」をスタートアップ企業による金融サービスの展開と定義したが,「FinTech」と「フィンテック」の相違点に言及せず,「スタートアップ企業」,「金融サービス」及び「展開」を定義していないため,結局,「FinTech」を定義していない。最後に,FinTechの基本と仕組みが分からなかった。何故ならば,どこに書かれているか分からなかったためである。

2点目は,著者の勉強不足である。少なくとも,株式会社xenodata lab.xenoFlashを無視したコラム(135ページ)及び株式の価格変動に正規分布を仮定して暗に負値の株価を認めたコラム(182ページ)があった。なお,xenoFlashとは,三菱東京UFJ銀行(当時,現:三菱UFJ銀行)の4ヶ月間スタートアップ企業向け集中支援プログラム『MUFG FinTechアクセラレータ』のDEMO DAYでグランプリを獲得したサービスである。DEMO DAYの開催日が2016年8月5日である一方,本書の発行日が2016年12月10日であるため,著者が持つ情報の鮮度に不安を感じた。