真部敏巳,河合保弘(2015)『知識ゼロからの会社の継ぎ方・事業承継入門』幻冬舎

 真部敏巳,河合保弘(2015)『知識ゼロからの会社の継ぎ方・事業承継入門』幻冬舎を読まなかった。なお,著者のうち真部敏巳は,企業再建・承継コンサルタント協同組合代表理事を務めている。

 本書は,次の文章で始まっていた。

事業承継は,すべての企業が意識しておかなければならない重要な経営戦略の1つです。

 「事業承継」という単語は中小企業庁の専売特許となっているため,中小企業(及び小規模事業者)は事業承継を意識する必要がある一方,すべての企業が意識する必要があるとは認識していなかった。「中小企業」と「すべての企業」の差分は,大企業とでる。有用な情報が記載されているのかと大いに期待したが,一瞥した範囲では皆無だった。これでは,詐欺同然だ。

 続いて,次の文章があった。

人口の減少,景気の変動,国際情勢の変化,産業構造の変革など,企業を取り巻く環境が不透明になる要素が増えてきている今,・・・(後略)・・・。

 著者は,とりあえず「不透明」と書いておけば危機感を煽ることができると思っている人間のようだ。逆に考えると,企業再建・承継コンサルタントの顧客は,闇雲に「不透明」と言われて事業承継を煽られてしまう程度の企業ということになる。

 少なくとも「人口の減少」は,人口がどうなるか,企業を取り巻く環境が透明になっている。また,景気の変動も,プラザ合意→バブル景気→バブル崩壊と比較すれば,安定している。そもそも,景気が安定しているから,中小企業経営者は事業承継を意識する余裕があるのだ。国際情勢も産業構造も,現代社会において,むしろ変化・変革していない時期がある場合は明記してほしい。

 「はじめに」の最後には,次の文章があった。

本書には,事業承継を考えている経営者や後継者候補,あるいは経営幹部、そしてこれまで狭い発想で事業承継を見てきた専門家の方々に,是非とも知っていただきたい内容が書かれています。

 狭い発想でも良いので,まずは,正しく誠実に書いてください。

www.amazon.co.jp